公益通報者保護法の改正の議論 6  ~ 不利益取り扱いをした事業者に対する行政措置、刑事罰

 公益通報の実効性を確保するためには、何らかの措置を導入すべきという方向で議論が進んでいます。

 まず、「行政措置を導入」することに関しては、不利益取扱いを行った事業者に対して何らかの措置を導入する必要があるものとされています。

 ただし、紛争解決手続において、話し合いにより迅速に解決できる事案については、その解決に委ねることが適当であるので、行政措置は、「重大かつ悪質な事案に絞って考えるべき」という意見が多いようです。

 また、行政措置の種類としては、是正を「勧告」し、事業者が従わない場合には「公表」すべきということについては、あまり異論はないようです。しかし、勧告・公表を超えて、「命令制度」まで導入することについては、引き続き検討が必要という形で整理されています。

 さらに、刑事罰については、例として、①命令制度を設けることを前提に、それに違反した場合に刑事罰を科す(間接罰)、②事前防止の観点から、是正されるかどうかを問わず、法律違反に対して刑事罰を課す(直罰)が挙げられていますが、これについても引き続き検討するということで整理されています。

 

 今まで数回にわたり見てきたように、公益通報者保護法において、企業側に内部通報体制の整備を促す方向での改正が予定されています。このような法改正により、内部通報制度の整備が後押しされるという側面はあるでしょう。

 そもそも、内部通報制度は、不正・不祥事を早期に発見することに有用な制度です。実際に、不正・不祥事が内部通報をきっかけとして発覚することは珍しくありません。企業としては、法改正によりしぶしぶ内部通報体制を整備するという消極的な姿勢ではなく、「企業価値の毀損を防ぐ」、すなわち企業価値を守るために、内部通報体制を「活用する」という積極的な姿勢が求められる時代になってきているといえるでしょう。

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