会社法改正法の成立(5)~ 会社補償に関する規律の整備

会社補償に関する規律の整備

 会社補償とは、役員等の責任を追及する訴えが提起された場合等に、取締役が要した争訟費用や損害賠償金を株式会社が補償することをいいます。

 現行法上、会社補償について直接に定めた規律はありませんでした。会社補償は、会社と役員の間に利益相反関係が生じますから、その弊害が指摘される一方、取締役の人材確保、取締役が過度にリスク回避的な判断を行うことを防止するといったメリットも指摘されています。

 改正会社法では、株式会社が会社補償をするために必要な手続や、会社補償をすることができる費用等の範囲に関する規定が新たに設けられました(改正会社法430条の2)。

 具体的には、以下のとおりです。

株主総会(取締役会設置会社にあっては 、取締役会)の決議

 当該株式会社が全部又は一部を補償することを約する契約(補償契約)の内容の決定をするには、以下の事項について、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければなりません(改正会社法430条の2第1項)

  1.  当該役員等が、その職務の執行に関し、法令の規定に違反したことが疑われ、又は責任の追及に係る請求を受けたことに対処するために支出する費用
  2.  当該役員等が、その職務の執行に関し、第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合における次に掲げる損失
  • 当該損害を当該役員等が賠償することにより生ずる損失
  • 当該損害の賠償に関する紛争について当事者間に和解が成立したときは、当該役員等が当該和解に基づく金銭を支払うことにより生ずる損失

会社が補償できない場合

 ただし、株式会社は、補償契約を締結している場合であっても、

  1.  争訟費用のうち通常要する費用の額を超える部分
  2.  当該株式会社が損害を賠償するとすれば、当該役員等が当該株式会社に対して第四百二十三条第一項の責任を負う場合には、当該責任に係わる部分
  3.  役員等がその職務を行うにつき悪意又は重大な過失があったことにより責任を負う場合には損失の全部

については、補償することができません(改正会社法430条の22項)。

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