会社法改正の議論 ~社外取締役の義務付け規定 

会社法改正の議論 

 会社法改正の議論が進んでいます。

 法務省 法制審議会の「会社法制(企業統治関係)部会」は、平成301024日に第17回会議において、「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案(仮案)」を提示しました。

 遡って、平成30829日に開催された第16回会議では、要綱案の「たたき台」が提示されていました。1024日に提示された要綱案(仮案)では、たたき台からの変更された点がいくつかあり、要綱案の内容が固まりつつあります。ここでは、社外取締役の義務付け規定について、取り上げたいと思います。

社外取締役の選任義務付け

 要綱案のたたき台では、社外取締役の選任を義務付ける案と、現行規定を見直さない(すなわち義務付けはしない)案との両案が併記されていました。

 しかし、要綱案(仮案)では、社外取締役の選任を義務付ける規定、『「監査役会設置会社(公開会社であり,かつ,大会社であるものに限る) であって、金融商品取引法第24条第1項の規定により、その発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは, 社外取締役を置かなければならないものとする」』のみが記載されています。

義務付け規定の法的問題点とその解釈

 この点、いわゆる上場会社等に社外取締役を置くことが義務付けられた場合には、「社外取締役に欠員が生じている状況でされた取締役会決議に瑕疵が生じ得ることを回避するために、事実上、補欠の社外取締役又は複数の社外取締役を選任する必要が生じ、上場会社等に与える負担・影響が、社外取締役を1名選任することにとどまらない」との指摘もあるところです。

 しかし、部会においては、仮に会社法において社外取締役を置くことが義務付けられた場合であっても、 社外取締役に欠員が生じたことが、直ちに取締役会決議の効力に影響すると考える必要はなく、社外取締役は取締役会の構成員の一人であって、これを特別扱いして、社外取締役を欠くときに有効に取締役会の決議をすることができないとまで考える必要はない、との整理がなされています。

 また、現行の会社法においては、指名委員会等設置会社における各委員会等の機関については、その構成員のうち一定数が社外役員でなければならないという規律が置かれています(会社法第400条第3項,第331条第6項,第335条第3項等)。しかし、今回の要綱案においては、これらの規定の定め方とは異なり、「上場会社等は,社外取締役を置かなければならない」という定め方をすることを想定しており、このような定め方であれば、「取締役会の決議要件との関係」においては、社外取締役を特別扱いせず、仮に社外取締役を欠いている場合であっても、直ちに有効に取締役会の決議をすることができないこととなるものではないと整理することができる、と指摘されています。

 そして、このような整理を前提として、上場会社等について社外取締役を置くことを義務付けるものとするものとされています。

社外取締役の選任状況 

 東京証券取引所は、ここ数年、6月総会終了後に、「独立社外取締役の選任状況」についての調査結果を公表しています。

 はじめてコーポレートガバナンス・コードの適用がされた2015年には、東証一部上場企業において社外取締役を1名選任している会社は、前年から20%アップして94.3%となりました。

 2018年においては、東証一部上場企業において、社外取締役が選任されていない企業は7社、その他の市場を含めても100社にも満たない程度であり、実務的な論点は、(独立)社外取締役の「複数」選任(3分の1以上の選任)、さらには個々の独立社外取締役の資質、活動状況、その評価に移ってきています。

 このような実務の状況を踏まえれば、社外取締役の義務付けに関する会社法の改正のインパクトは小さいようにも思えますが、上場企業において社外取締役が義務付けられるとすると、どのような社外取締役が選任されているか、さらにその社外取締役が活躍しているかどうかが、ますます重要となってきます。

 未だこのような会社法改正が成立するか不確定ですが、上場企業としては、持続的成長や中長期的な企業価値向上に資する、独立社外取締役を含めた取締役会の構成や評価が、今後ますます問われてくるであろうことに留意するべきでしょう。

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