社外取締役の在り方に関する実務指針(社外取締役ガイドライン)の策定 2
社外取締役の心得
「社外取締役の在り方に関する実務指針」(社外取締役ガイドライン、以下「本ガイドライン」)の第1章では、社外取締役の心得が、以下の5つに整理されています。
心得1
社外取締役の最も重要な役割は、経営の監督である。その中核は、経営を担う経営陣(特に社長・CEO)に対する評価と、それに基づく指名・再任や報酬の決定を行うことであり、必要な場合には、社長・CEOの交代を主導することも含まれる。
心得2
社外取締役は、社内のしがらみにとらわれない立場で、中長期的で幅広い多様な視点から、市場や産業構造の変化を踏まえた会社の将来を見据え、会社の持続的成長に向けた経営戦略を考えることを心掛けるべきである。
心得3
社外取締役は、業務執行から独立した立場から、経営陣(特に社長・CEO)に対して遠慮せずに発言・行動することを心掛けるべきである。
心得4
社外取締役は、社長・CEOを含む経営陣と、適度な緊張感・距離感を保ちつつ、コミュニケーションを図り、信頼関係を築くことを心掛けるべきである。
心得5
会社と経営陣・支配株主等との利益相反を監督することは、社外取締役の重要な責務である。
社外取締役の役割と責務
このうち、心得1と心得5においては、社外取締役の「役割や責務」が示されています。
心得1
まず、心得1では、社外取締役の最も重要な役割は「経営の監督」であること、その中核は、経営陣、特に社長・CEOの評価であり、必要な場合には、社長・CEOの交代を主導する、すなわち解任のために主体的に行動することを求めています。
ここでいう社外取締役が行うべき経営の監督は、業務執行の暴走を止めるという意味での「守り」の側面のみならず、会社の持続的成長を実現するための「攻め」という側面の監督も含まれます。
とはいえ、執行は一義的には経営陣が担うべきものであり、社外取締役は「非業務執行」という立場から、過度に細かい業務執行に立ち入らないことにも留意が必要でしょう。
心得5
次に、心得5では、会社と経営陣等との利益相反が生じうる場面では、独立の立場から社外取締役が積極的に関与し、その妥当性を判断することが期待されていることが述べられています。
このような積極的な関与が求められる具体的な場面としては、例えば、MBOや支配株主等との取引、敵対的買収、第三者割当増資等への対応が挙げられています。
社外取締役として心掛けるべきこと
心得2、3、4では、社外取締役のこのような役割・責務を果たすために、留意すべき心構えや行動規範が示されています。
心得2
まず心得2では、 社外取締役のあるべき立場や持つべき視点が述べられています。
社外取締役は、社内のしがらみにとらわれない立場で、社内の常識にとらわれない視点、中長期的で幅広い多様な視点を持ち、会社の持続的成長に向けた経営戦略を考えることが必要です。
心得3、4
心得3では、社外取締役の行動規範として、経営陣(特に社長・CEO)に対して、あえて空気を読まず、遠慮せずに、忖度なく発言・行動することを心掛けるべきであるとされています。
このように、社外取締役は、独立の立場から、社内のしがらみにとらわれず発言、行動するべきであり、経営陣と適度な緊張感、距離感を持つべきです。
しかし、経営陣に対する監督の実効性を高めるためには、社内の情報を的確に入手することが重要です。このためには、経営陣と社外取締役が、それぞれの立場や役割を認識し、尊重しあう信頼関係を作ることが不可欠です。
このような問題意識から、心得4では、社外取締役と経営陣が、適度な緊張感と距離感を保ちながらも、コミュニケーションを図ることにより、社外取締役が、監督者として、一方的な意見を述べるのではなく、反論にも真摯に耳を傾けることなどにより、信頼関係を築く重要性が指摘されています。